経済危機の中で雇用を維持するための各界の動き

労働ニュース第2009‐3号

 貴社には益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。

 2月23日に「経済危機を克服するための労使民政非常対策会議(韓国労総、経済5団体、政府、市
民・社会団体)」が合意文を発表し、「労働界は企業の経営与件に応じて賃金の凍結 ・ 返納 ・ 削減
を実践し、経営界は整理解雇を自制してワークシェアリングなどを積極的に実践する」 ことを約束し、
労使が苦痛を分担することによって経済危機を克服しようという意志を表明しました。

 この合意文が発表された直後、 全国経済人聯合会が今年度の30大企業グループの大卒新入社
員の初任給を削減 (最大28%まで) し、削減分は採用規模を拡大するための費用に充ててワーク
シェアリングを実践すると発表しました。 これに対して韓国労総を含む労使民政対策会議は合意の
趣旨に符合しないとして反対を表明しました。 一方、当初から労使民政の社会的合意に反対してき
た民主労総も全経聯の発表に強く抗議しています。今年は賃金を凍結または削減することにした事
業場が増加し、 賃上げ率は全般的に下方調整される見込みですが、 民主労総傘下の金属労組が
今年の賃上げ要求案を4.9% とする旨を発表したこともあって、 今年の賃金交渉は必ずしも順調に
進むとは限らないように見受けられます。

 今月号では、労使民政非常対策会議の社会的合意文、全経聯の雇用安定対策、および民主労総
傘下金属労組の賃上げ要求案などの主要内容を抜粋してご紹介いたします。 貴社のご参考になれ
ば幸甚に存じます。

 

2009年 3月

株式会社 韓英 JBS
代表理事  金思烈
公認労務士 鄭銀淑


 

経済危機の中で雇用を維持するための各界の動き


T.「経済危機を克服するための労使民政の合意文」の主要内容
      (経済危機を克服するための労使民政非常対策会議、2月23日発表)



 1.賃金と雇用 → 労使の苦痛分担による雇用維持とワークシェアリング
 
経済危機を克服する過程において、労働界は企業の経営与件に応じて賃金の凍結 ・
返納 ・ 削減を実践し、経営界は経営上の理由による解雇を自制して既存の雇用水準
を維持するようにする。
企業は構造調整が避けられない場合でも一方的な人員削減よりも希望退職を最大限
に活用するようにし、 労使民政は債権金融機関が労使の苦痛分担とワークシェアリン
グの努力を最大限に尊重することを促す。
労使は各事業場の実情に合わせて、 交替制の改編、労働時間の短縮、 賃金ピーク
制の導入拡大、循環休職および休業制度の導入、無給安息月(年)制度の導入、 人
員再配置、教育訓練 (休暇)、在宅勤務など、多様な方法によってワークシェアリング
を積極的に実践する。
労使は大企業を中心に賃金の凍結 ・ 返納 ・ 削減や経費節減を実践することにより、
非正規職労働者と下請協力会社の労働者の雇用安定を支援するように努める。
大企業は社内下請会社と協力会社 (またはこれらの会社で失職した世帯主) を積極
的に支援して、これらの会社の雇用安定と共存共栄を図る。
労使政三者は、 労働時間の柔軟化、 職務価値と熟練要素を拡大した賃金体系への
転換、迅速な再就業支援などのために共同して努力する。

 


 2.団体行動と経営参加 → 労使の信頼と協力による共生の文化の定着
 
労働界は不法ストが根絶されるようにし、経済危機を克服する過程でストを自制する。
経営界は不当労働行為が根絶されるようにする。
労働界は企業の人事権と経営権を尊重して不合理な経営参与を要求せず、 経営界
は透明経営と倫理経営および誠実な労使交渉などを通じて 労使間の信頼の基盤を
作る。

 


 3.雇用維持とワークシェアリングのための政府の役割と支援

  1) 賃金の凍結や削減の努力に対する支援
 
政府は、 ワークシェアリングを実践する企業に対して税制支援をするのと同様に、
ワークシェアリングによって賃金所得が減少した労働者に対しても 相応の税制支
援を推進する。 そのため、 時限的に社内勤労福祉基金を通じて労働者に生計費
を支援できるようにする。
政府は、労使の合意によって賃金を削減してワークシェアリングを実施した中小企
業に対して、 賃金削減額の 一定の比率に相当する金額を損金に算入することが
できるようにするなど、時限的な税制支援策を考究する。
労使政の三者は賃金ピーク制などを通じて 雇用を維持または延長する労働者に
補填手当を支給する制度が活性化するよう努力する。
政府は、 賃金を削減してワークシェアリングを実践した企業で倒産や経営上の理
由による解雇などで 失職した労働者に支給すべき失業給与と 退職金を算定する
ときは、賃金が削減される前の金額を基準にすることができるようにする。



  2) ワークシェアリングを実践する企業などに対する支援
 
政府は雇用維持支援金の支援水準を上方調整するとともに、職業訓練や休職期
間などのような支援要件を緩和するようにする。
労使民政は、 経営が悪化した企業の労使が合意して雇用を維持するために法定
基準に達しない休業手当を支 ・ 受給して労働時間の短縮や休業を実施する場合
には、 労働委員会が勤労基準法上の例外承認申請を審査するときにその旨を尊
重するように促す。 また、政府は休業労働者に対する支援対策を作る。
研究開発や コンサルティングなどの各種支援事業と政策資金支援など、 経営上
および金融上の各種支援事業において、政府はワークシェアリングに参与する企
業を優待する。
大企業と中小企業が協力して中小企業労働者の雇用を維持するための職業訓練
を実施する場合、政府はこれに必要な支援を拡大する。
優良中小企業の黒字倒産や倒産を防止するため、政府は信用保証を拡大してゆく。
政府は、雇用を維持するために新たに交替勤務制を実施する企業や、組を増やす
方向で交替制を変換する企業に対する支援方案を作る。



  3) 物価安定など公共部門での支援
 
ワークシェアリングによって賃金が減少した労働者と国民が生計費の負担を軽減す
ることができるよう、 政府と企業は物価安定と価格安定のために積極的に努力する。
労働者を含む国民の教育費を軽減するため、政府は公教育活性化方案を考究する。
労働者の住居費を安定させるため、政府は持続的に不動産価格安定対策を作る。
経済危機を克服する期間中、 ウォンの対ドル交換レートと原資材価格の上昇など
による公共料金の値上り要因を最小化するため、 政府は公共機関が経営効率性
を持続的に向上させることによって値上り要因を最大限に吸収するようにさせる。



  4) 雇用創出
 
保健、社会福祉、教育、文化、環境、地域社会開発など、 社会サービス分野での
雇用を拡大し、この雇用が持続可能なものになるよう、 政府は制度的基盤を拡充
する。
政府は短期的で低賃金の財政支援による雇用を社会的企業へと転換・育成する。
企業は剰余金などの内部留保資金を活用して未来の成長動力となる分野に先制
的に投資するなど、雇用を拡充することに努力する。
国内外の経済事情の変化などで雇用与件が急激に悪化した地域が発生した場合、
政府は該当地域を雇用促進開発地域に指定して、地方自治体および企業の雇用
促進と雇用創出を支援する方案を考究する。



  5) 失業者や非正規職労働者に対する転職支援と職業訓練の強化
 
労使政三者は再就業センターや転職支援センターの機能と役割を拡大して、失業
者および失業予定者と非正規職労働者に対する就業の相談や斡旋などの雇用支
援サービスを拡大する。
労使政三者は労使共同訓練事業の領域と規模を拡大 ・ 改編して、失業者および
失業予定者と非正規職労働者に対する職業訓練の機会を拡大する。
政府は「勤労者能力開発カード制」を利用して受講できる職業訓練のカリキュラム
を拡大して、非正規職労働者の職業訓練の機会を拡充する。
政府は前職失業者と新規失業者の職業訓練のための財源を拡大し、需要者の選
択権 (職業能力開発講座制度の拡大施行) を強化して実業者の職業訓練の機会
を拡大する。
政府は失業者と危機世帯の成員が職業訓練に専念できるように訓練期間中の生
計費の貸付を拡充するとともに、就業支援サービスを提供する。
政府は、構造調整の危機にさらされている労働者を対象にして転職支援サービス
を提供する企業に対して支援を強化する。



  6) 中小企業の欠員補充
 
政府は、欠員のある企業のデータベースを構築したり、個々人に対する就業支援
計画書を整備するなど、集中的な就業支援サービスを提供するとともに、 中小企
業の雇用環境を改善するなどして欠員を埋めることを積極的に支援する。



  7) 青年層の就業促進
 
政府は就業が困難な青年層に対して総合的な就業支援サービスを提供する「ニュ
ースタートプロジェクト」を拡大する。



  8) 非正規職労働者の雇用安定
 
政府は非正規職労働者の雇用を安定させるために 財政支援などの多様な解決
方案を考究する。



  9) 雇用サービス伝達体系の拡充
 
雇用維持、ワークシェアリング、失業給与、および就業促進のための対策を効果
的に推進するため、政府は雇用サービス伝達体系を拡充し、民間はボランティア
活動など多様な方式で支援する。



  10) 失業給与の支給拡大
 
雇用状況に応じて、 失業給与の受給要件、 個別 ・ 特別延長給与の支給要件、
および支給期間などを時期を限って弾力的に適用する方案を政府は考究する。

 


 4.社会的合意の伝播と合意事項の履行のための支援事項

  1) 企業単位、地域単位、全国単位で譲り合いの労使交渉を拡散させる
 
事業場単位では、 危機を克服するための譲り合いの労使交渉が拡散するよう、
労使団体が所属労組と会員会社に対して 雇用維持 ・ ワークシェアリングの方
法を指導する。 政府は「危機克服支援団」を構成・運営する。
労使民政の四者は、労使民政非常対策会議が地域単位で雇用維持 ・ ワーク
シェアリングの方法など危機克服対策を立てて実践するように支援する。



  2) 中央レベルで社会的合意を積極的にサポート
 
労使民政の四者は「経済危機を克服するための労使民政非常対策会議」傘下
に履行点検団を構成 ・ 運営し、これを経済社会発展労使政委員会に支援させ
て合意事項が履行されているかどうかの点検を徹底させる。
政府はワークシェアリングの優秀事例を発掘して広報するなど、 公共部門と民
間部門に模範事例を広め、より多くのワークシェアリング優秀企業を表彰する。
政府は政府機関やマスコミなどと共同でキャンペーンを実施して、社会的にワー
クシェアリングの雰囲気を盛り上げる。

 


U.全国経済人聯合会「雇用安定のための経済界の発表文」の主要内容(2月25日発表)



 1.賃金と雇用 → 労使の苦痛分担による雇用維持とワークシェアリング
 
今年の経済成長率がマイナス2%と展望されていること、企業の経営与件の悪化、
20万人分の雇用が消滅するおそれがあることなど、「雇用大乱」が憂慮される状況
にあって、経済界が共同して雇用維持およびワークシェアリング事業を推進する。

 

 2.目標
 
高すぎる大企業の大卒初任給を削減するとともに、 既存社員の賃金を下方調整
することによって 財源を作り、 それを雇用安定と新規社員やインターンの採用に
使用する。

 

 3.賃金の下方調整
 
既存社員の賃金は労使合意によって下方調整するように誘導する。
大卒新入社員の賃金は 競争相手国よりずっと高いので 合理的な水準になるよう
に調整する。 初年度年俸が2600万ウォン を超える企業の場合は、各企業の実情
を考慮して差をつけて削減する。削減率は、初年度年俸が2600万ウォン以上3,100
万ウォン 未満なら 0〜7%、 3,100万ウォン以上 3,700万ウォン 未満なら 7〜14%、
3,700万ウォン以上なら14〜28%とする。また、初年度年俸が2,600万ウォン以下の
企業でも全般的に下方調整する。

 

 4.賃金削減分の活用方法
 
賃金の削減分は雇用維持とワークシェアリング事業の財源として活用する。

 


V.全国金属労働組合「2009年賃上げ要求」の主要内容(2月25日発表)



 1.金属産業の最低賃金
 
労働者全体の通常賃金(月額2,140,699ウォン) の50%に相当する月額 (1,070,350
ウォン)を金属産業の最低賃金とする。 所定労働時間を月209時間とすれば、時給
は5,121ウォンとなる。
   - 全国民主労働組合総連盟は常時雇用労働者5人以上の事業場の労働者の平
   均定額給与の50%を最低賃金とすることを要求している。 2008年の平均は月
   額2,140,699ウォンであったから、この50%に相当する1,070,289ウォンを最低賃
   金として要求する。そのためには、現行の月額950,000ウォンを12.7%引き上げ
   る必要がある。
適用対象は金属事業場で働くすべての労働者 (非正規職労働者や外国人労働者
を含む)とし、適用期間は2010年1月から12月までとする。
最低賃金を適用するとき、既存の労働条件が低下しないようにする。

 

 2.金属産業の賃上げ要求率
金属労組では 経済が危機的状況にあることを考慮し、 使用者が非正規職労働者
を含む総雇用を保障することを前提としたうえで、 2009年の賃上げ要求率を 例年
に比べて相当に低い水準に設定した。
実質賃金の低下を防ぐため、2008年の物価上昇率3.0%に、2007年の労働所得分
配率61.5%と 1996年の63.4%との格差である1.9%を加算して、賃金を4.9%引上げ
ることを要求する。基本給基準では87,709ウォンの賃上げを要求する。
このように正規職労働者の賃上げ率を最少化するが、その代わりに、正規職労働
者と非正規職労働者との賃金格差を解消するために、 非正規職労働者の基本給
引上げ率を正規職労働者りも高くする。

 

資料提供:株式会社韓英JBS