☆ W E I G H T☆

「ワールド・エコノミック・インデックス・ゴルフ・ヘビーウェイト・トーナメント」
−2000年度の世界主要各国経済のパーフォーマンスと底力をゴルフに喩(タト)えれば...

韓国日商岩井株式会社 社長
森島 英一

ニュー・ミレニウム最初の年そして21世紀最後の年であった2000年は、韓国にとっても世界経済にとっても波乱の多い年であった。そして経済、文化のグローバリゼーションは、そういったお題目には構うことなくどんどん進んでいる。

私はこの程、世界主要国の、2000年度の経済パーフォーマンスをゴルフ・トーナメントになぞらえて、ランキング を試みた。

私は、日本の商社に身を置くものだが、本社勤務時代、業務本部長を勤めていた。その時の一つの重要な仕事が、世界各国の経済状況とその展望、各国別のリスク分析、そしてこれらをベースとして各国毎の事業戦略を定性的、定量的双方において策定することであった。現在はこの会社の韓国現地法人の社長として、韓国・日本間の取引に加え、韓国と他の国との間の取引、本社から見て「外国間取引」と呼ぶビジネスの拡大にも努力している訳だが、かかる業務に携わるにあたって、各国別のリスク分析、経済予測は多いに役に立っている。韓国の企業も海外市場に進出するにあたり、こういったグローバルな視点にたった経営は益々必要になってくるものと考えられる。

この「2000年度各国経済パーフォーマンスのゴルフ風ランキング」が、多忙なビジネスマンにとって、ビール片手に気楽な気分で読める読み物であると同時に、中長期戦略策定の小さなヒントにでもなれば幸いである。

それでは早速ランキングに進もう。今回のワールド・エコノミック・インデックス・ゴルフ・ヘビーウェイト・トーナメント(WEIGT)のまとめにあたっては、次の手順を踏んだ。


@ 世界的に信頼性の高い週刊経済紙「 The Economist」 末尾に記載の、世界の主要な成長中経済圏(Emerging Economies)と先進経済圏(Advanced Economies) の経済指標一覧を洗い出し、成長中経済圏を一つのグループ(成長性リーグ)とし、先進経済圏をもう一つのグループ(安定性リーグ)として、それぞれのグループ内の各国比較を行なった。
これら二つのリーグは、少しく異なるルールによるゴルフ・プレーであるといえる。

成長性リーグは、国の経済の成長性要素に重点を置いたプレー、そして成長を達成することにより、世界の経済の不安定要素とならなかったし、むしろ世界経済全体の安定要素、成長要素となった、という達成度がスコアに反映されるルール である。

他方、安定性リーグは欧米日の先進経済国がメンバーであり、経済の安定性、これによる国内政治、社会の安定、雇用状況の安定、そして外部経済への需要市場の提供といった点が貢献度としてスコアに反映される、というものである。

A その総合点がWEIGHT のランキングとなる。

B ゴルフのハンデは、安定性リーグの場合、各国の国内総所得(GDP) が多ければ多いほどローハンデとするベースで、ランキングから逆算したネット/グロスを算出。従って、ローハンデであれば、「6 中長期的に」7 国際経済社会での重要度が高い経済であることを示しており、WEIGHTランキングは、2000年度一年という「8 短期的な」9 観点での貢献度と活躍ぶりを示すものといえよう。

成長性リーグ各国のハンデは、GDPと合わせ、過去数年におけるパーフォーマンスや経済危機の有無、対外債務の不履行の有無などを勘案して独自に策定したもの。

種々の経済指11 標の中で、際立って高い点数のものを、イーグルやバーデイーで注
記し、逆に、その国の経済の足を引っ張った指標をトリプル・ボギーとした。

C ゴルフ・ランキングの基となる各国経済指13 標に関する資料は求めに応じて読者に開示するが、まとめて言うと、各リーグの指14 標は次ぎのものとなっている:

成長性リーグ − GDP成長度 / 工業生産成長度 / 消費者物価上昇度(マイナス・ファクター)/ 外貨準備高成長度 / 貿易収支 / 株式指数上昇度

安定性リーグ − GDP 成長度 / 工業生産成長度 / 消費者物価上昇度(マイナス・ファクター) / 失業率低下度 / 株式指数上昇度

二つのリーグ のランキング査定においては、指標が異なっていることにつき説明する。
成長性リーグに採用されている外貨準備高成長度や貿易収支が、安定性リーグには無く、替わりに失業率低下度が採用されているのは、推測頂けると思うが、先進国の場合は、「外貨をため込むばかりではダメで、国内失業率も低くし国内の景気を良くし、消費の増大を実現することを通じて需要市場、輸入市場として開放し、成長国の経済を支援するのが大事だ」という国際社会の理念に基づくものだ。日本の場合、往々にして、「とっくに先進経済水準に達している、世界第二の巨大経済圏なのに、輸出ばかりに専念し、国内経済を開放せず輸入市場となっていない、その結果、外貨ばかりをため込んでいる、これはむしろ悪だ」との批判を受ける所以(ユエン)だ。

一方、成長性リーグの場合は、上の国際理念は目標として追求すべきだが、「その前に先ず」、自国経済の足腰を強くすることにより、少なくとも国際経済社会に「迷惑を掛けないことが大事」、そのためには、「先ず、外貨危機、対外債務の不履行等を起こさないよう、先ず、外貨をしっかり稼ぎなさい」という趣旨である。

成長性リーグ 成績発表

グロス
ハンデ
ネット
順位
イーグル
バーデイ
トリプルボギー
ロシア
108
36
72
@
外貨準備急増
貿易収支好転
インフレ続く
中国
91
18
73
A
GDP成長と工業生産成長でバーデイー二つ
シンガポール
83
8
75
B
活発な経済成長
マレーシア
91
14
77
C
持続成長
フィリピン
110
32
78
D
工業生産活発化
物価上昇
イスラエル
105
25
80
E
韓国
92
11
81
F
外貨準備増
株価下落
香港
94
12
82
G
GDP成長
インド
103
20
83
H
ハンガリー
103
20
83
H
工業生産増
インフレ
エジプト
(以下、名誉のためスコアを記載せず)
J
チェコ
K
コロンビア
L
物価上昇
メキシコ
M
物価上昇
台湾
N
株価下落
ブラジル
O
チリ
P
南アフリカ
Q
アルゼンチン
R
ベネズエラ
S
インフレ
タイ
21
株価下落
ペルー
22
ポーランド
23
物価上昇
トルコ
24
インフレと株
価下落

安定性リーグ 成績発表

グロス
ハンデ
ネット
順位
イーグル
バーデイ
トリプルボギー
スエーデン
85
13
72
@
工業生産成長
スイス
85
11
74
A
カナダ
84
7
77
B
オーストリア
93
14
79
C
ドイツ
83
3
80
D
EU代表
83
3
80
D
デンマーク
96
15
81
F
フランス
87
5
82
G
米国
83
0
83
H
スペイン
93
8
85
I
イタリア
92
6
86
J
オーストラリア
97
10
87
K
物価上昇
オランダ
97
9
88
L
日本
91
2
89
M
株価下落
ベルギー
104
12
92
N
英国
97
4
93
O

各国寸評

ロシア

97年末から98年にかけてアジアを襲った通貨危機が伝染し、98年8月には、ロシアが対外債務支払い不能の状態となり、外国政府、外国民間金融機関や企業の対ロシア債権の大幅カットがその後2年をかけて行なわれた。
所謂、パリ・クラブとロンドン・クラブのリスケである。ルーブルは大幅切り下げとなり、国内生産も大幅ダウン、IMFからの支援資金もどこに行ったのやら判然としない始末。
いわば瀕死の状態に陥ったロシア経済であったが、99年後半から2000年にかけて、「神風」が吹く。世界的な原油価格の高騰である。ロシアは世界有数の石油・ガス 埋蔵量を誇る国であり、大きな外貨稼ぎの手段である。8ドルだった原油価格が32ドルと4倍になるに伴い、外貨準備も急増し、2000年末には一年前の3倍の240億ドルに達した。これは、ロシア自体にとっての朗報であるだけでなく、世界の経済にとっても大いなる安堵となるニュースであろう。リスケにより大幅カットとなった債権もいつ返ってくるのか分からない状態であったものだが、少なくともその分は返ってくる可能性が大きくなったのだから。これがロシアの WEIGHT トーナメント でのイーグル達成である。そして、これのもととなっている貿易収支好転がバーデイー。 インフレというトリプル・ボギーもあったが、36という、見放されたようなハンデのお陰でトーナメント優勝!

ロシア・チームのキャプテンを勤めたベテラン、ゴルフチェフ氏も、ほっとした表情であった。
ロシア・チームの中で中心的存在となったプレヤーはなんといってもパットイン選手。
若くてマジメ、得意のパッテイングで点数を稼ぎ、チームのメンバー連には WEIGHT という国際ゲームの規則もきちんと守らせた指導力も見事であった。


中国

旺盛な経済成長、適度に押さえられた物価水準、好調な株価市況と、資本主義経済の見本の様な社会主義体制の中の経済運営。各指標で手堅くポイントを稼ぎ、バーデイーも二つ確保した。ロシア・チームのイーグル一つ、バーデイー一つは、キャデイーが「ラッキー!」と掛け声を上げた通り、将に幸運の女神が微笑んだお陰と言えるのに対し、中国チームのバーデイー二つ、その他パー多数というスコアは体力と技術をフルに発揮した結果と言えよう。

中国チームの精神的なリーダーである孔少打キャプテン先生は、「巧言令色仁少なし、
大言壮語暴戯(ボギー)多し」との教訓をチーム・メンバーに垂れられ、全員一致でまじめにプレーに専念し、二位に入ったものだ。


韓国

98年はIMFバンカーに悩まされた為か、絶不調であったが、金大統領の強いリーダーシップにより見事IMFバンカーからの リカバリーを果たした99年
(成長率10%超)に続き、2000年も好調の波に乗り、パーを重ね、特に、
外貨準備高950億ドルは成長性リーグで最大の増加率の結果であり、見事
バーデイということになった。但し、株価の大幅下落というトリプル・ボギーも出してしまい、足を引っ張った。
株価下落と言うトリプル・ボギーの原因は、二つのダブル・ボギーである − 不充分な経済構造改革と、不充分ながらそれなりに進んだ構造改革に伴う激しい労働争議である。この二つのダブル・ボギーは、二律背反的なものであり、よりドラスチックな改革を断行するとせば、雇用不安からより激しい労働紛争に至り、外国よりの投資が減るおそれがあり、さりとて改革をやらないと、これも外国投資家から見放されるおそれがある、という難しい状況だ。
2001年は、構造改革の完遂の年であると政府は宣言しており、成果を期待したい。

経済成長、工業生産成長、先端技術と情報化の進展といったパーが幾つかあるにもかかわらず、これらのダブル・ボギーとトリプル・ボギーにより、
本来5位乃至4位に付けて良い筈の韓国チームは7位に甘んじたのであった。

韓国チームのキャプテン、Mr. Chip-In大臣は、外貨準備バーデーを自らの100ヤード・チップ・イン により獲得した功労者であるが、同氏のマジメで明るい性格により、韓国チームのメンバーは一際(ヒトキワ)威勢(イセイ)が良かったのが印象的であった。


香港

香港はシンガポールと共に、GDP成長率二桁台を達成し、バーデイーとしたが、他のポイントではパッとしたところがなく、ボギー乃至精々パーといったプレーで、8位に終った。香港チームのキャプテン、ニー・アー・ピン行政長官は、海運業出身で国際派である一方、上海出身の父親の影響を受けて、大陸色も色濃く残している御仁であり、今後の香港経済の舵取りとして、国際色と大陸色をミックスし、如何にうまくバランスを取りながらやってゆくか、注目されるところ。

筆者自身も海運ビジネスに長年携わっていたため、ピン 長官とビジネスをしたことがある。1980年代半ばに スコットランドの造船所での新造船の進水式でピン氏とお会いしたことが昨日のことのように思い起こされる。


ハンガリー

東欧の優等生、ハンガリーが、アジアのタイガー軍団に伍して、9位に入った。経済成長は活発であったが、インフレが進行、出入りの激しいゴルフであった。


安定性リーグ

このリーグは、名前の通り、スコアは概ね安定しており、成長性リーグの様な、出入りの激しいゴルフとはならなかった。イーグルやバーデイーも少ないかわり、トリプル・ボギーも少ない、どちらかと言うと「オモシロクない」ゲーム展開であったと言える。しかし、このリーグがオモシロクないくらいに安定しているからこそ、世界経済も大不況とか恐慌に陥らずに済むものであり、それなりの評価はすべきである。このリーグの各国は総じてローハンデが多いが、その割りにイーグルやバーデイが少なかったのは、成長性リーグが通常のホワイト・テイーから打ったのに対し、安定性リーグは距離の長いブルー・テイーからテイー・オフ することが義務づけられていたことも原因となっている。

成績結果を見れば明らかなように、欧州各国が上位を占めている。EUという枠組みの中で、ユーロという共通通貨制度も発足したが、通貨はジリ貧となったの対し、各国の国内経済は概ね好調であった。

中でも、欧州諸国の中での ローエスト・ハンデであるドイツが、このロー・ハンデを克服して5位に入ったこと、そして、EU諸国をまとめる形で、各メンバー国とは別途EU代表として参加した結果、各メンバー国の好況に支えられ、ドイツ一国と同率の5位に入っていることが注目される。 逆に言えば、ドイツのEU経済に占める重要度が伺えよう。

ドイツと対照的なのが英国で、ハンデ4で、上手い筈の英国チームがショット、パットともに振るわず、最下位に甘んじた。

昔から良く言われる経済上のことわざに、「米国がクシャミをすれば、他の先進諸国も風邪を引き、発展途上国は肺炎になる」というのがあるが、ことほど左様に、米国経済の世界経済に占める重要度は高いものがある。米国経済の規模(GDP世界一)という点に加え、世界政治のリーダー役を務めているからである。したがって、2000年も、米国の景気がアップ・ダウン するたびに、世界中の政府や企業人、マスコミも一喜一憂するような年であった。
90年代を通して、バブルが弾(ハジ)けて苦しんでいる日本になりかわる形で、世界経済のエンジン役を務めてきた米国経済も2000年になり、エンジンの吹かし過ぎのためか、エンジンの調子がおかしくなり、スピードが鈍ってきた。

安定性リーグの中でも唯一のスクラッチ・プレヤー、つまりハンデ・ゼロ の米国チームのキャプテン、Mr. グリーン・オン の手腕に注目が集まったが、米国チームのスコア・アップは充分に達成できず、2000年については中位での低迷に終った。
グリーン・オン氏は、2001年に入り、米国チームを冬期強化合宿による特別訓練に駆り出しており、これは、今年末の WEIGHT 2001 に必ず成果を結ぶものと期待される。米国チームの新メンバーとなったブッシュ選手は、いつもボールを
ブッシュに入れてしまうのが弱みだが、チーム・ワークにより、世界経済の舵取りを旨くやって欲しいものである。

2000年も、日本チームは冴えなかった。ハンデ 2のセミ・プロ 級のプレヤー で、1980 年代には世界中の試合で大活躍したものだが、不慣れな海外遠征による無理が祟(タタ)ってひどい筋肉痛が未だ完治せず、この10年は悶々とした日々を送っている。

WEIGHT 2000 トーナメント においても、株価下落というトリプル・ボギーをたたき、これの影響で、不良資産処理の遅れ、銀行・企業体力の低下、経済構造改革の先送り等のダブル・ボギーも出してしまい、あわやブービーと言う低位に甘んじたのである。日本チームのキャプテンは、Mr. 林(ハヤシ)だが、「林」は、英語で言えばbush であり、この Mr. ハヤシ も ブッシュがお好き、但し、米国のブッシュ氏は、ブッシュに入れると、これを力いっぱいたたいて、力ずくでもグリーン・オン してくるのが魅力だが、Mr. ハヤシ は、一度林つまりブッシュに入ると、中々出てこない、林の中で何をしているのか良く分からない、というのが、他のチーム の コメント である。バーデイー やイーグル を出す底力は持っているのだから、早く、トリプル・ボギー を出してしまう原因となっている筋肉痛を完治して欲しいものだ。

2001年5月現在、日本チーム の キャプテン は Mr. 林(ハヤシ) から Mr. 小鼓(コツズミ)に交替している。打出の小鼓から景気回復の妙案が出てくることを期待。

2001. 05

Nnnn