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「外国人CEOから見た韓国の競争力」 ソウルジャパンクラブ 「外国人CEOから見た韓国の競争力」と言う主題でお話をするよう依頼を受けました。 ご存知のように1997年アジア通貨危機から、韓国も経済危機に陥りました。当時、コリアゼロックス(現在は韓国富士ゼロックス)と称していた私どもの会社は、50・50のジョイントベンチャーだったのですが、韓国側パートナーが経営に行き詰まり50%の買戻要請を受け、富士ゼロックスの100%子会社になりました。私は1998年にこの会社の再建の命を受けて韓国に赴任しました。それから7年経ち、会社も立派に立ち直りました。 1.通貨危機以降の構造改革について 1998年は金大中政権が誕生した時でした。 韓国に赴任した時、何故、韓国に経済危機が起きたのかを考えました。97年夏のタイのバーツ暴落を引き金に、またたく間に韓国を含めアジア各国が経済危機に陥りました。現象的には、外資の短期資金の引き揚げに起因して起きたわけです。しかし、ある韓国の知識人が私に「韓国の経済危機の根本原因は通貨危機ではない。通貨危機が引き金ではあったが、根本原因は今までの土地・労働・資本という生産の3要素と言われる古い有形資産重視の30年前の経営スタイルをずっと引きずってきたことにある。今は情報とか知識とか技術とか無形資産の時代である。パラダイムが変わっているのに、韓国経済はそれに対応できないからこうなったのだ」と説明してくれました。これは以後の私の会社再建活動に大変示唆に富む説明でした。 @ 経済構造改革 A 産業構造改革 我が社の例をとってお話します。何故、我が社・コリアゼロックスが1998年に経営危機に陥入ったのかと言うことです。私どものビジネスはハードウエア、即ち、複写機をお客様にお貸しし、又はお売りして、お客様にコピーをとっていただくと言うものです。コピーはオフィスのコミュニケーションに資するので、ソフトウエアなるアフターサービスビジネスは私どもの大事なビジネス分野です。仮に売上を100とすると、複写機販売のハードウエアで大体3割、ソフトウエアなるアフタービジネスが7割、これが我が社の安定経営の為の経験値です。ところが当時、コリアゼロックスでは販売7割、アフター3割と逆転していました。これはプロフィットやキャッシュフローにはあまり目を向けない、販売台数志向・シェア至上主義の経営だったからです。これでは不況になると物が売れないので経営はおかしくなる訳です。1998年赴任後、いかにアフターサービスを増やすかに注力し、現在やっと5、6割まできましたが、この道のりは容易くはありませんでした。韓国のビジネス慣行と経営スタイルに深く根ざした問題であるからです。 多くのお客様がサービスはタダと思っている訳です。日本もかつてはその傾向がありました。韓国のレストランで、キムチなどの惣菜がテーブル一杯に並ぶのに似ています。レストランでキムチなどの惣菜をお代わりしても追加料金は取られません。追加料金をとったらサービスが悪いとお客様から非難されます。複写機業界にも日本のようなトータルサービス契約はありませんでしたし、なかなか理解されない状況でした。機械が壊れたら直しに行くのですが、直してもお客様は“お前のところの機械だから”とお金を払ってくれない訳です。では消耗品とか補給部品はというと、安価な海賊版やコピー商品が沢山ある訳です。我が社の代理店でさえ、品質を無視して、ただ、安いと言うことで海賊版やコピー商品を使用している有様でした。このような古いマーケットの体質を変えるのは本当に時間がかかります。努力は今も継続しており、少しずつ改善されつつあるというのが現状です。我が社のみならず、韓国全体でも、政府の指導もあり、サービス・ソフトのビジネスとしての重要性がだんだん浸透しつつあると実感しています。 B 企業構造改革 以上、金大中大統領以来の構造改革とその推進状況を私の理解でお話しました。 2.「北東アジアの経済ハブ建設構想」について 盧武鉉政権に移って、大統領就任時に12のアジェンダを発表しました。その一つが「北東アジアの経済ハブ建設構想」です。これが唯一の経済アジェンダで、あとは全部内政問題に絡むものだったと思います。私はビジネスマンですから、経済ハブ構想に非常に興味と関心を持ちました。 さて、この経済ハブ構想ですが具体的には@ファイナンシャルセンター、Aロジスティックスセンター、BR&Dセンターの三つの経済ハブを目指し、もって韓国の経済を発展させたいというのが、盧武鉉大統領の韓国の競争力強化方針であったと思います。従って、“韓国の競争力を高めることは大統領方針の「北東アジアの経済ハブ建設構想」を国民の総意で実現することである”と言うのが本日の私の強調したいポイントです。 @ファイナンシャルセンター Aロジスティックスセンター BR&Dセンター 韓国富士ゼロックスでの私の経験でお話をします。富士ゼロックスは、4年前まで、日本,韓国、中国に各々工場がありました。当時の本社の開発・生産戦略は、コスト採算性から、全ての工場を中国にシフトするというものでした。現に日本の工場のいくつかはクローズになりつつあります。我々の仁川工場もクローズ対象になり、そこで働く250人の従業員と約100社のベンダーは仕事を失いかけました。そこで私は本社に「グローバル経営とは、例えば宇宙船から各国を見て、その国の強みを活かすことである。韓国の強みは開発と生産の一体化にあるのでこれを最大限活用すべきだ」と異議申し立てをしました。確かに生産コストは中国が安いことは事実です。中国は韓国の生産コストの約10分の1です。韓国と日本では3分の1といわれていますから、中国と日本を比べれば30分の1です。生産コストだけなら中国の生産拠点の優位性は揺るがないでしょう。しかし、物作りはトータルコストで見るべきだと思います。物作りというのは必ずそこに技術から生産に移行する生産技術のプロセスがあるわけで、この部分は開発した人間が一緒になって生産現場でやる必要があります。設計図一枚渡して“さあ、作れ”という代物ではないのです。韓国のR&Dを活用する利点はココにあるというのが私の主張でした。韓・中のR&D能力を比較し、R&D費も含めたトータルコストで考える必要があると思ったのです。これは私が韓国に赴任した1998年の1年後、即ち、今から7年前、韓国富士ゼロックスのR&D社員を日本の本社に送り込んで、デジタル技術を研修させた結果、約1年でそれを習得して、なおかつ日本語まで覚えて帰ってきたことから、韓国R&D社員の高い質と能力を評価したことによるものです。 韓・日のR&Dコスト差は、2.5か2分の1ぐらいの差がありますので、コスト的にメリットがあるわけです。 複写機はコンポーネントでできています。エンジンの部分は非常に高品質、高技術が要求されますので日本で開発と生産を担当します。韓国ではその周辺機器、すなわち紙を置くペーパートレイ、最後のフイニッシャーや、ドキュメント置きの開発と生産を担当します。そしてエンジンは日本から、周辺機器は韓国から中国に送って、中国の安いコストで組み立てて、世界のマーケットに供給するわけです。まさに日・中・韓三カ国の強み活用した開発・生産プロセスを実行しているのです。私は、これを「日・中・韓の競争と共生の構造」、(Competition & Co-operation between Japan, Korea and China Structure)と名付け、ぜひ東北アジアのモデルにしたいと考えています。この結果、我が社の仁川工場の従業員250人と約100社のベンダーは仕事を失うことなく,韓国の輸出に貢献し、昨年度も11月30日の貿易の日に「輸出1億ドル塔」国務総理賞の栄誉に授かりました。 我が社の例が長くなりましたが、「東北アジアのR&Dセンター」化は、我が社のケースが示すように実現可能性があると思います。そのためにも国レベルでR&D 投資をもっと増加させる必要があります。2004年度のデータで見ますと、年間のR&D投資額は日本が1690億ドルで韓国は194億ドルで日本に比べ11.4%の比率です。韓国の経済規模は日本の10分の1〜9分の1と言われていますから、比率的にはこうなるかも知れません。ここ2,3年投資額が増えてはいますが、しかし、私はまだ少ないと思います。私は国民経済諮問委員会のメンバーとして次の4点を大統領に提言しています。1)民間企業がもっとR&D 投資をすべきである。2)そのためにも政府指導で優遇税制等のR&D投資インセンティブをもっと仕掛けるべきである。3)EngineeringやTechnologyなど理工系大学生をもっと増やすべきである。4)国民に物作りの大切さをもっと啓蒙すべきである。 3.韓国経済の課題と対応策 韓国経済のGDP成長率は2004年度、4.7%、2005年度、3.9%と2年連続で下降現象にあります。その原因は韓国経済のファンダメンタルな構造にあると思います。それは二極化現象です。IT・自動車・造船・家電・半導体を輸出している産業、企業は儲かっていますが、この他の産業、企業は儲かっていません。このように勝ち組と負け組の二極化現象が広がっています。勝ち組みといわれる、例えばIT産業の場合、技術・資本集約度が高いので労働力依存度が相対的に低くなり、雇用創出効果は低くなります。また、輸出品を構成する部品・素材などの中間財は海外からの輸入依存度が高いため国内投資および雇用の増加に繋がることが難しくなります。それ故、部品素材産業は殆ど発展せず、大企業の成長果実が中小企業に伝播できない状況です。優良大企業は急速な技術進歩に対応し、R&D投資などを通じて自らの技術水準を高めていますが、中小企業は資金と人材不足、信用力の制限などの要因でR&D投資に厳しさを抱えています。従って、政府としては産業連関関係を強化し,輸出の増加が投資、消費および雇用の増加に繋がる好循環構造を構築し、現在の大企業中心の産業クラスターを中長期的に中小企業も参加できる開放型に改変する政策をとるべきです。そして、企業間格差を少なくするような革新および調整を積極支援し、人的資本育成中心の成長促進型細分財政策をとるべきであると考えます。 日韓両国は産業構造が似ている、中間所得層が多い、教育水準が高い、都市化が進んでいるなど多くの共通点があります。一方、両国には2―3倍の賃金格差、9倍の経済規模差、技術力・品質力の差があるとされるものの、日本は人口の高齢化・少数化傾向、生産設備の老朽化現象、そして消費減退とデフレで長い間続いた経済低迷からやっと抜け出した状態にあります。韓国は消費力が高く、競争刺激にあふれ、成長活力に満ち溢れていますし、生産設備は比較的新しく、労働力年齢でも20年程度の余裕もあります。このように両国がその強み,弱みを持っているわけで、相互に補完しあいながら1つの市場を作ることにより人口で1億7千万人、経済規模で米国の3分の2に匹敵する5兆ドルの市場ができると言われています。このことにより1)韓国企業、製品の日本市場への浸透、2)韓国の持つバイタリティ-により日本の国内改革が期待でき、両国の活性化に繋がる。そして3)人的のみならず、技術,知識等の交流が飛躍的に活発化し、4)日韓企業間の戦略的提携の可能性が生まれる。さらに副次的効果として5)アジア進出を考える欧米企業にとって魅力的な市場となり「北東アジアの経済ハブ建設構想」の基になると確信します。 以上、私の7年間の韓国での経営経験をベースに「外国人CEOから見た韓国の競争力」の話をしました。お聞き苦しい点も多々あったと思いますが、本日の私の拙い話が少しでも皆様のお役に立つことを願い、韓国が一日も早く「北東アジアの経済ハブ建設構想」を実現し、国際競争力を高められることを期待しています。 |