釜山市で

国際証券 Seoul支店長 中村貞行氏

 旧暦の盆にあたる「秋夕」が近づいた。

 この時期、韓国では人民大移動が起こりソウルの街は“裳抜けの殻”状態となる。空の便、陸の便とも半年前から満席で、地方へ向かう道路は大渋滞となる。

 先週、席が取れるうちにと考えて、特急「セマウル」で釜山まで出掛けた。

 片道約4時間半の旅だが、“鉄道の旅”の愉しみでもある「駅弁」は韓国には存在しない。駅構内での物品販売は戦没者関係団体の収益源となっており、一般の飲食店の進出を規制しているためだ。やむを得ず食堂車を利用したが、これも30分近く待たされて出て来た定食は8800ウォン(約880円)と高い割に“オール・レトルト”で頗る不味い。まさに『遅い、高い、不味い』の3拍子揃った“特選定食”だった。競争原理が働かないから、こういうことになるのだろう。同行した韓国人は「これがソウルの食堂で出たら、4000ウォンでも誰も食べない」と憤慨していた。

 釜山駅から乗り込んだ“模範タクシー”は、朝から駅で客待ちして最初に乗せた客が我々だそうだ。時計を見ると、1時半を過ぎている。

 「市内を走っても料金の安い“一般タクシー”すら空車が目立つのに、“模範タクシー”に乗る客は1人も居ない。結局、我々は駅や空港やホテルで客を待つしかないんだ。誰が大統領だろうが関係無いね。今では1日10万ウォン(約1万円)も稼げない日が多いのだから、これでは人間らしい生活ができるはずが無い」

 下請企業が多い釜山市の不況感は相当深刻に感じられた。

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