ナカムラ 

 「韓国では悪人として有名な名前だから、覚えやすいでしょう?」

 そう言うと必ず相手は失笑するが、韓国のドラマに登場する『中村』なる日本人の役柄は人道無非な“ならず者”と相場が決まっているようだ。

 韓国人にとって忌まわしい『豊臣』姓は“稀”な苗字だから省くとしても、「壬辰倭乱(文禄・慶長の役)」における侵略軍司令官・加藤(清正)や、「日帝36年」における朝鮮総督府初代長官・伊藤(博文)の方が遥かに有名でポピュラーな苗字だと思う(加藤・伊藤姓の方、スミマセン!)。

 何故、歴史上なんら有名な人物もいない『中村』だけが悪人の代名詞として使われているのか分からない。

 大分以前の事になるが、知人の駐在員とタクシーに乗り込んだ時に、私達の会話を聞きつけた運転手が「アンタ、中村か…。俺は知ってるんだが、なんで『中村』という日本人には悪人しかいないんだ?」と唐突に質問され戸惑った事がある。

 この時は、同乗していた韓国人が「韓国人の『金』氏にも悪人や善人がいる。名前だけで人を判断するのはおかしい」と擁護してくれた。同乗していたのは“かの有名”な『伊藤』サンだったのだが、運転手は彼の苗字には一言も触れなかった。

 「単に、日本人の中で一番多い苗字だからでしょう」と韓国人の知人は慰めてくれるが、「日本の苗字10000」(新人物往来社)によると、日本人の苗字は佐藤・鈴木・高橋・田中・渡辺・伊藤・山本・中村・小林・加藤の順で『中村』は8番目。

 すぐに名前を覚えてもらえる点では、確かに便利とも言えるのだが…。

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