冬到来 

 『落ち葉の舞い散る停車場は…』

 はるか昔、奥村チヨが歌いヒットした曲の歌詞が自然と口をついて出てくる。

 朝の通勤時、コートの襟を立てたビジネス・マンやマフラーで口を押さえたビジネス・ウーマン達が足早に駅へと向かって歩いていく。
 
 ソウルは、朝晩“氷点下”の日が続き、いよいよ本格的な冬の到来となった。

 ソウルは緯度的には日本の仙台とほぼ同じなのだが、大陸性気候のため冷え込みは北海道に近い。東京生まれの私にとっては厳しい寒さなのだが、知人の韓国人古老によると「昔の寒さはこんなものではなかった。“6・25事変(朝鮮動乱)”の時は北朝鮮軍がどんどんソウルに近づいてくるため、市民が先を争って全面凍結した漢江(ハンガン)を徒歩で渡り南へと逃げたものだ」ということになる。

 私も1度は漢江を徒歩で渡ってみたいと思っているのだが、都市化が進んだためかこの10年ほどは全面凍結したことがないそうだ。

 冬の韓国と言えば真っ先に思いつくものに『温突(オンドル)』があるが、今は温水循環が主流の『温突』も昔は釜の煙突を床下に這わせただけの単純な構造で、炊事している間は暖かいのだが火を落としてしまうとすぐに冷え込んでしまい、彼の幼い頃は「兄弟同士、身体を寄せ合って足を擦りながら寝たものだ」そうだ。

 彼の体感温度計によると「耳の痛みはマイナス5度、顔の痛みはマイナス15度」らしいが、そんな“痛み”を感じる日もそう遠い事ではなさそうだ。

戻る