韓国横河電機株式会社 帯刀 楯夫

韓国のゴルフは出来るだけストレスを少なくする自己満足型ゴルフである。そしてゴルフはブルジョアのスポーツであった名残が未だに存在する。

クラブハウスの内装、趣に特別な違いはないが、先ずカウンターでキャディフィーを請求されることはない。18ホールが終わったところで直接キャディに手渡す。勿論領収書は出ない。明らかに脱税行為であるが、税務署の人も黙認し同じように処理する。

名門ゴルフ場は今でも1バック、1キャディである。キャディと1対1で密着プレーもたまには良いものだ。しかし、最近のゴルフ場は4バック、1キャディが基本。韓国のキャディは独身で25歳までに限られる。日本のようにお節介にも技術指導までするおばさんキャディはいない。最近では就職難で大学卒もいるようだ。1ラウンドで平均7萬W(約7千円)。1か月に20ラウンドやって約140萬Wになる。これは一般企業に就職した場合の給与より稼ぎは良い。ボーナスは無いが、毎日が運動になり、残業もなく、中にはチップを多くはずむ客もいる、自由な時間が多く使える等希望者が多いのも理解出来る。

面白いルール(決まり)がある。最初のホールは全員ボギー(パー以下はそのまま)とする。最初は体がほぐれていないから練習ホールとしているのだ。実に都合の良いルールである。最初は面食らったが、最初からストレスを負担しない配慮から生まれた。

次ぎにスコアはキャディがつける。プレーヤーが申告する場合もあるが、キャディが勝手につけてゲームが進行するケースも多い。だからスコア―は信用出来ない。キャディが見ていないショットもあるから、スコア―は決して実際より悪くはならない。これも自己満足とブルジョアの遊びから導き出された習慣である。これも実に都合が良い。日本では考えられないケースである。

ロストボールは誰もが頭に来る。絶対ある筈のボールがそこに無い。良くあるケースだ。通常この場合は2つのぺナルティが加算されるのが当り前。しかし、韓国は違う。ある筈の場所に何故かボールが見当たらない。特に落ち葉のシーズンは最悪である。これは非常に気の毒なことだ。おまけにボールまで無くし二重の損失である。可愛そうですからペナルティは1つにする。如何でしょうか。これだから間違い無くスコア―は良くなる。

OBライン(白杭)を越えると致命的である。しかし、ここでも甘い配慮が受けられる。OBラインを少し越えたものでも打てるなら、OB無しでプレーを続行出来る。例えばボールが見えており、しかも白杭から30CMだけ外に出た。「そのぺナルティは可愛そう。ノーペナでどうぞ」。初めて韓国人と一緒に回ると、大抵の日本人は面食らう。場合によっては腹も立つ。この文化の違いは韓国人と日本人の象徴的行動様式として比較すると面白い。世界ゴルフ協会も驚く甘いルールである。

プレー中にはOBあり、バンカーあり、チョロありとスコア―を落とす要素は沢山ある。
ここで登場したのがダブルパーにて打ち切るルール。例えばパー4を10で回ったとする。しかし、スコア―は8止まりとする。これは次のホールへの活力を喪失させない配慮である。私も18ホールで1、2回はダブルパーをオーバーする場合があるが、何とも助かる。
当社の幹部社員もゴルフ熱は高く、3~40人はゴルフをやる。最近始めた者も多いが、
初心者でも1年足らずで100を切る。1年足らずだからコースには恐らく数回の経験だ。
しかし、この韓国ルールでやれば100を切るのも理解出来る。

韓国人のフィールドでのマナーは良く無い。これも民族性、文化の成せる業だと思うが、自己中心の行動が多い。つまり、プレー中に前後のグループの動きは気にしない。世界は彼等を中心に回っているのかとまで思いたくもなる。これは結構今でも頭に来る。時々余りのマイペースに打ち込みたくもなる。
バンカーでの踏み跡だらけは珍しく無い。砂掻きをしても掻き棒はバンカー内に無造作に放り出していく。しかも、これをキャディが直す気もないし、お客への指導もない。ゴルフクラブには通常キャディ委員会なるものがあり、マナー改善への取組みをするものだが、機能しているとは到底思えない。

日本ではキャディにコース途中の茶店でチョコレートなどお菓子を買う習慣がある。ここではそれがない。何故ならお客が立ち寄る茶店でキャディも勝手に飲んでいるから。勿論、お客のツケである。

クラブハウスのロッカーでの様子も違う。プレーが終了するとロッカーに向かう。日本では着替え(カバン)を持って浴室に入る。韓国ではパンツ一枚で浴室に向かい、着替えはロッカーに収納したままである。当然、風呂から出て、整髪しパンツのみ換えてロッカーに戻る。そこでゆっくりと着替えることになる。このシステムは浴室での盗難予防となるし、バックを持ち運ぶ手間がないので結構な方法である。この習慣が身についている私は、日本で恥を掻く。私だけがロッカーでパンツ一枚になっている。
風呂場の中でも違いがある。大抵の日本人はタオルで前を隠しながら入り、比較的静かである。韓国人は正反対である。前など隠す人は皆無。正々堂々と入り、大きな声で喋る。
しかも、風呂場には熱い風呂、普通風呂、冷水風呂の3段階があり、次々と渡り入る。高血圧の人は大丈夫かと気になるが、豪快に楽しんでいる。洗い方も豪快である。泡だらけになって泡が周囲に吹っ飛ぶ。韓国人の風呂好きは日本人以上と思ったりもする。
次ぎに風呂場から出てきていきなり鏡の前に立つ。しかし、ここでもびっくりする。誰もパンツを身につけていない。鏡を見ながら隣の人の全てが見える。この大胆なおおらかさ。最近はすっかり慣れたが、この真似は未だに出来ない。

韓国人はゴルフ大好き。つまり1年365日がシーズンである。冬のソウルは寒い。たまには雪も降る。しかし関係無い。冬はカラーボールが良く売れる。雪の中でもクラブがクローズにならない限りやってしまう。私など12月から2月までの3か月は完全冬眠と決めこみクラブは握らない。誘われることが多いが行く気は全く無い。体にも悪いと思うからだ。芝生は凍結。北風は強い。兎に角寒い。両手袋をつけ、スキーの帽子をかぶり、完全武装でやるのだ。凍結した池に入ったら、果敢に氷上のボールを打つ。勿論、グリーンでは1クラブ以内OKである。このすさまじい異常ともいえる環境の中でも楽しむ活力には感心する。

ゴルフは社長さんがやるもの。ブルジョア層の楽しみとして根付いてきた。従って、キャディがお客さんを呼ぶときはOO社長様である。ゴルフ場の全プレーヤーが社長様となる。馴れない日本人は真面目に対応し、「私は社長でなく部長です」などと訂正するが、それはお客様への敬称と思えば良いのだ。また、韓国の社長クラスは運転手付きでゴルフ場にやってくる。クラブハウスの駐車場は今でも黒づくめである。大きな運転手控え室が必ずあるのもその為だ。ゲームが終わるとキャディは車のNOを確認する。運転手がいれば必ずバックは指定の車のトランクに事前に納められている。実に殿様スポーツである。

韓国のゴルフ場は全国で140ヵ所程度と聞いている。日本の2200ヵ所と比較すれば極めて少ない。人口比からすれば韓国も600ヵ所位あってもおかしくない。これだけゴルフ人口が増えてくると、需給バランスが崩れ、ゴルフ場は強気な商売に走る。メンバーでも月に2回出来れば良い方だ。嫌なら来なくて結構なのだ。いくらでもお客はいる。平日のゴルフも満員である。今や、景気が悪かろうが関係無く混んでいる。おまけに奥様族もやりだしたからたまらない。米国LPGAで活躍する朴セリ、金ミヨンの女子プロが一般大衆ゴルフに火を付けた韓国。これから益々盛んになること間違い無し。

私は常に思う。日本人と韓国人は顔だけが同じ。あとは全て違う。この違いを理解しないで単に違うのは変だと考える方がおかしいのだ。違うことにも意味がある。何んでも日本の尺度で見てしまう日本人の方が疲れる。しかし、私も随分馴れてはいるが、まだまだ韓国社会一般には国際的基準での秩序の欠如は多い。