国民経済諮問会議:盧武鉉大統領への提言
「東北アジア経済中心構想」実現の為に「国のイメージ」を変えるべきである

尊敬する盧武鉉大統領閣下殿

過日、大統領閣下の国賓としての訪日に同行できたことを大変光栄に存じます。
また、この度大統領諮問機関である国民経済諮問会議のメンバーに加えていただいたことをこの上ない名誉に感じています。

6月11日に開催された第1回国民経済諮問会議で金振杓副総理兼財政経済部長官から発表された「参加政府の経済政策方向」についてはやや総花的に感じますが異論はありません。当日発言の機会がありませんでしたので書面を以って提言させて頂きます。

中長期政策課題推進でとりあげた地政学的利点、優秀な人材資源、世界最高のIT技術などを活用しての「東北アジア経済中心構想」は成長潜在力の拡充と言う観点から最重点政策として推進する必要があると考えます。

今年1月から日韓投資協定(BIT)が施行し始めました。日韓投資協定の締結により両国の投資が促進されることが期待されますが、欧州のEU,アメリカのNAFTAなどの世界経済地域ブロック化動向、中国の台頭並びに東アジアの経済構造の変化(経済統合の進化)を考えますと次のステップとして両国の自由貿易協定(FTA)締結は焦眉の急であると考えます。中国との経済協力はますます進めるべきでありますが、関税を撤廃するというFTAの締結は時期尚早と考えます。FTAという高度の経済統合に限定して議論するのであれば、まず、日韓の間で締結されることが望ましいと考えます。日韓FTAが両国にもたらす定量的、定性的効果については既に各所で発表されていますので言及いたしませんが、副次的効果としてアジア進出を考える欧米企業にとって魅力的な市場となり大統領閣下がめざす「東北アジア経済中心構想」の基になると確信します。

この「東北アジア経済中心構想」実現のために5年間の韓国での経営実践経験を踏まえ、韓国が次の3つの観点から「国のイメージ」を変えるべきであると提言いたします。

1つめは韓国はもっと「開発と生産の一体化したもの作り」の強いイメージをアピールすべきです。
大統領の訪日に先立ち、5月30日にSJCと尹鎮植産業資源部長官との懇談会を開催、その席で日本企業の対アジア投資の現況を日本のJETROのデターを基にご説明いたしました。
日本企業の対アジア投資はここ数年横ばい状況にあります。横ばいとは言え、内訳を見ますと中国への投資が増加傾向にあるのに対して、韓国への投資は減少という忌々しき傾向にあります。しかし、既に韓国に投資をした在韓日系企業の経営状況を分析してみますとアセアンや中国への投資日系企業より次のような顕著な特徴があります。添付資料に見られるように(1)収益状況は良好(2)現地(韓国)企業からの調達率がすこぶる高い(3)韓国のベンダーは高コストだが,優れた品質,技術、納期を保持(4)生産技術,操作技術や品質管理水準が高い、(5)良質な労働力(6)低い輸出比率、先進国型投資にシフト(輸出指向型から内需指向型へ)(7)競争力の強化策は高付加価値化、マーケティング力強化(8)今後の事業の方向性は拡大傾向。
この顕著な特徴は韓国の強みであるといえます。これは大統領が訪日の際、日本の経営者からの「中国への投資に比べ韓国への投資のメリットは何か」と言う質問の答えでもあると確信します。韓国の強みの1つは「開発と生産の一体化したもの作り」にあります。人件費が安いという理由で中国が生産拠点化していますが、韓国はもっと「開発と生産の一体化したもの作り」の強みをアピールすべきです。そのためにも中長期的観点に立ちもっとR&Dに投資をすべきです。韓国産業技術振興協会の報告によりますと『過去30年、韓国のR&D投資額は主要先進国を上回る年平均22.4%の増加となった。しかし、2001年度韓国のR&D投資額は125億ドルで日本の規模の8%にしかにすぎない』と言う状況です。従って、政府は旧態依然の如く業種と企業を指定して資金を支援するやり方でなく(1)国民にもの作りの大切さの教育・啓蒙をして意識を変える必要があります。そして(2)研究開発の重要性を認識させることが大切で、具体的には企業の設備投資や研究開発投資に対するインセンティブや税制支援の拡大を図るなどして啓蒙すべきです。さらに(3)法・制度などのハードウエア―第一の構造改革から各経済主体の意識や慣行の改善などのようなきめの細かいソフトウエア―改革にもっと力を入れるべきです。

2つめは「品質国家-韓国」のイメージ作りです。過去に橋が落ちたとか、デパートが崩れたとか、最近の地下鉄惨事のような品質工学問題や現代グループの北朝鮮開発に対する政府支援や政経癒着事件のような政治問題、またSKグローバルの1兆5千億ウォンに上る粉飾会計事件のような経営問題など品質がらみの暗いイメージは残念ながら枚挙にいとまがありません。このイメージを変えるためには、企業人は品質経営、政治人は品質政治、公務員は品質行政を推進して国民自らが「品質国家韓国」のイメージ作りをしなくてはならないと思います。歴史学的にみると韓国では今から約750年前、高麗高宗の時代に「八万大蔵経」を作った事実があります。これは1000名あまりの刻手が5200万字を81340経の経版に刻印した巨大な作品で、世界初といわれるグーテンベルグの印刷技術より早いものです。ところが最近これをコンピューター化してみたところ,漢字の誤字も脱字も全くなかった事が明らかになりました。この驚くべき品質は「一字三拝」(一文字を刻んでお辞儀を三回した)の精神から来ているということです。この様に韓国の先祖は世界初の完全品質を成し遂げた実績を持っているのです。真に誇るべき事実だと思います。

3つめは労使問題イメージの払拭です。労使問題は基本的には政治問題ではなく経営問題です。即ち、経営者が経営を透明にして、労使の信頼関係を構築することにより解決する問題です。韓国の経営の特徴は財閥経営にあります。財閥経営が「漢江の奇跡」と称される韓国の経済発展をもたらしたことに異論はありません。しかし、財閥経営は所有と経営の未分離が欠点です。財閥経営においても労使紛争のない企業もありますが所有と経営が未分離のため経営が不透明になりがちです。私は98年春、韓国富士ゼロックスを再建するために赴任いたしました。専門経営者として自分の5感機能を駆使して社内のコミュニケーションを円滑にして経営の透明化を図ってきました。3年後、労使の信頼が高まり労働組合は無紛争宣言をしました。爾来、この3年間賃金交渉の場である春闘は無交渉で賃金が決定しています。成功の鍵は経営の透明化と労使の信頼関係の構築にあります。韓国の労働者は良質ですから経営の透明化と労使の信頼関係の構築により労使問題は払拭できると確信しています。然しながら,今日現在も労使紛争が後を絶たないのが現実です。外国からの投資を誘致するためにも、投資環境の整備の一環として『法と原則』を基本としつつ政府の適切な対応が期待されます。

金振杓副総理兼財政経済部長官は「参加政府の経済政策方向」の最後で、
1) 政府は景気の軟着陸のために、速やかで一貫した政策対応努力を持続、
2) 企業は経営透明性を高めて,信頼を積んで未来を準備する投資を拡大、
3) 勤労者は集団的行動より合理的対話を模索して、生産性向上範囲を超える賃金引き上げを自制し、国家競争力を高めることに協調、
4) 消費者は健全で合理的消費をし,不動産投機のような経済秩序に邪魔になる行為をしない倫理意識を確立と説明されました。
これを実現することは簡単ではありませんが、「ニューコリア」のイメージを作ることだと確信します。
このために大統領閣下の強いリーダーシップが求められます。ソウル・ジャパンクラブも全力で応援していく所存です。

(2003,6,16)

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