「盧武鉉大統領へのコメント」

拝啓 尊敬する盧武鉉大統領殿

国内景気が急落しています。消費と投資が急激に萎縮し、景気は事実上沈滞局面に入っています。我々、複写機業界を見ても今年に入り国内の販売状況はマイナス成長です。企業の設備投資マインドが冷え込んできているのです。これについては世界経済の影響や前政権からのインパクトもありますから現政権の政策の個々についてのコメントは遠慮します。しかし、「個人所得を1万ドルから2万ドルへ」のスローガンも掲げられたので外国人企業家の立場からファンダメンタルな政策、即ち「外国投資誘致政策」についてコメントします。

政府の積極的な外資誘致努力にもかかわらず、FDIは急激に減少しています。これは世界経済が不況で投資雰囲気の萎縮も一つの原因ですが、他主要国と比較して韓国が投資要件で見劣りする点があるからだと思います。
2002年度IMDの評価は別表-1の如くです。

<別表-1> 外国人投資に対する差別及び規制程度の評価

区分 外国企業
差別程度
外国人投資家に
対するインセンティブ
外国人投資家
保護装置
外国人投資家の
国内企業の支配許容
英国 21 16 37 17
中国 36 17 23 49
シンガポール 12 3 14 25
韓国 45 27 39 33

(調査対象総49ヶ国中の順位、数字が低いほど外国人投資家に友好的、
資料:IMD 「World Competitiveness Yearbook」、2002)

また、在韓外国企業が指摘する外国人投資に対する急ぐべき改善隘路事項は下記の如くです。

<別表-2> 外国企業が指摘する外国人投資に対する"急ぐべき改善隘路事項"

労使関係 124 政府政策の透明性など 70 生産コスト 67
行政規制 55 複雑な通関と高い関税 42 租税制度 29
金融サービス 15 言葉の疎通 13    

(2003年5月、駐韓外国企業76社を対象にアンケート調査した結果、応答社の回答順位を表したもの。
資料:全経聯、毎日経済新聞2003年7月10日)

外国人投資を誘致するためには他国との差別化された投資誘致政策と魅力的な制度改善が必要です。

別表-2に見るごとく何と言っても労使関係は韓国のネガティブ・イメージの最たるもので政治家も、企業家も、労働組合幹部も国家的問題として早急に解決しなければならない項目だと思います。
強烈な対立的労使紛争にとどまらず労働生産性に比べて高い賃金上昇率、労働市場の柔軟性不足は投資の最大阻害要因です。
基本的には企業が所有と経営を分離して経営の透明化を図ることが問題解決の最短方法でですが、韓国の資本主義の生い立ちを考えると簡単なことではないのでしょう。しかし、今や国家的問題と認識するならば「法と原則」に基く厳しい対応が必要です。制度的には整理解雇要件を緩和し、引き受け・合併時の雇用継承義務を最小化することが必要です。政府はノーワーク・ノーペイの原則を遵守させるととともに不法争議行為に対する厳正な法の適用をすべきです。協力的な労使関係を構築するために政府や上級労働団体が労使間の対話と協力を精力的に調整すべきです。外国企業人から見て上級労働団体のイデオロギー的闘争は目に余るものがあります。この点、第28回労使政委員会で盧大統領の「今の労働運動に名分はない」(朝鮮日報9月4日)の指摘は的を得たメッセージであったと高く評価します。

投資誘致政策についてはさる5月30日に我々、SJCと産業資源部長官との懇談会で具体的に説明しました。日本投資企業に対して、これまでのインフラ整備やインセンティブ付与などの固定観念的投資誘致政策はもはや限界にきていますし、内外投資誘致説明会も効果が薄いと思います。日本投資企業がなぜ中国やアセアン諸国に投資をするかという要因分析をする必要があります。日本の産業構造はメーカーを頭とする系列構造です。まずメーカーが投資をしてその系列の部品、素材ベンダーが追従して投資をするのです。産業構造の似ている韓国に、日本のメーカーは投資の余地がありません。従って、系列のベンダーも追従しません。韓国のメーカーが日本のベンダーに不足の部品や素材を安定的に供給を求める構造を構築すれば、自ずと投資が増えると確信します。投資した後も投資前と同じ支援を続けることも大切な政策です。その点で言えばオンブズマン制度やワン・ストップサービス制度は高く評価される制度だと思います。

租税面では、現在27%台の名目法人税率を中国、シンガポール水準の15-20%台に引き下げると同時に配当所得に対する非課税も検討することをお願いします。また、外国人投資に対する法人税の減免対象事業に社会間接資本設備や代替エネルギー設備も含める必要があると思います。

生活環境の改善についても外国人学校の設立、医療機関の充実、交通標識の英語や漢字の併記など広範囲にわたる改善が求められています。

9月2日に産業資源部は「外国人投資誘致戦略と対策」を発表しました。韓国政府のすばらしいところはすばやい対応にあります。しかし、私の5年間の韓国駐在経験から感じるところは失礼ながら「NATO」即ち「NO ACTION、TALK ONLY」の感があると言うことです。もはやビジョン作りではなくそのビジョンを実践、実現することにあります。我々、企業経営では5ヵ年計画を作り、年度の目標を定めPDCA(PLAN,DO,CHECK,ACTION)サイクルを回して目標確認をするという「改善活動」をしています。韓国は日本の議員内閣制度と異なり大統領制度で5年間はその身分を保証されるわけですから5カ年計画を着実に実行するのには最適の制度だと思います。

盧大統領の強いリーダーシップでこれらの政策が実践、実現されることを期待しています。

(2003,9,10)

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