「わさび」と「ビビンバブ」の調和

2年前の秋、日韓文化交流基金金賞受賞の金利恵さんが構成・振り付け・演出をし、韓舞する「白い道成寺」が湖厳アートホールで公演されました。「韓舞」とは金利恵さんが伝統的な韓国舞踊を基にしつつ、それに新たな創作を加えた自らの舞踊に名付けたものです。

「道成寺」物語は日本紀州道成寺(どうじようじ)の縁起に伝わる伝説で、日本では能・浄瑠璃・歌舞伎舞踊などに脚色され広く知られています。道成寺の釣り鐘の再興供養に女の怨霊が白拍子の姿で現れ、乱拍子を舞い、蛇体となって供養を妨げるのですが、僧の祈りで退散すると言う恋に破れた女の恨みと死後の執念の恐ろしさを描くお話です。この説話には古代、土着日本人と朝鮮人の葛藤の歴史をその源とすると言う説もあるようで日韓の古い繋がりを感じさせます。

この「道成寺」を「白い道成寺」としたのは白衣民族とも言われる韓国人の白を象徴としたものです。韓国の色彩感の重要な基盤は陰陽五行説にあるようです。即ち、陽色である五正色(赤・青・黄色・白・黒、)と陰色である五間色(紅・碧・緑・硫黄・紫)の十色を基本色としています。特に「錦繍江山」と言われる韓国の気候は晴天が多く、空気中のオゾンが白色衣をさらに白く浮き立させることから韓民族は白への愛好をもったようです。韓国文化に根ざした新しい解釈で新たなもう一つの「道成寺」を作り出した金利恵さんのアイデアです。

「道成寺」物語は日本の古典ですから、私は二つの観点から興味を持ちました。
1つは日本の古典舞踊と韓国舞踊の調和です。 特に日本の古典「能」は間の取り方が大事です。これに金利恵さんがどう挑戦するのか興味がありました。
2つめは日本の古典音楽(邦楽)と韓国の伝統音楽(国樂)の調和です。邦楽は「静」であり、国樂は「動」ですからこの「静」と「動」を如何に調和させるのか興味津津でした。

しかし、私の興味と言うより心配事は杞憂に終わりました。
金利恵さんの舞は「間」を飲み込んでしまったまさに韓舞でした。彼女の表現を借りれば「舞い踊っている時、大きな自然の流れに触れたように感じる瞬間があります。思いが膨らむと、呼吸が流れ、体が応じます。足を踏み、手を上げ、宙に弧を描き、息を止め、抱き、解き、放ち…、それが舞いになり、踊りになります。」と言うことになります。
「静」と「動」の調和も杞憂に終わりました。今回の韓国側の音楽監督を努め、チャンゴの第一人者で国民勲章受賞の金徳洙さんは「日韓両国の伝統音楽はそれぞれそれなりの味と呼吸を発展させてきた。そしてこの2つは絶えず会わなければならない。会えば関係が生まれる。生まれる関係は調和でなくてはならない。そして、その調和はお互いの本来の姿を守りながら共に分かち合う時に可能になる。」と言い、見事に調和させ我々観客に感動を与えてくれました。

そして、この調和の接点にキーボードが大きな役割を果たしました。「静」の邦楽の代表楽器は鼓です。鼓は「わさび」のような鋭い響きがあります。「動」の国樂はチャンゴ、ケンガリ、テグム、チン、テピョンソ、アジェンなどで奏でられ、それは「ビビンバブ」のような賑やかさがあります。 キーボードはこの「わさび」と「ビビンバブ」をうまく調和させました。

>「白い道成寺」公演は日韓の文化に新しいページを開いたと確信しています。

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