「点」を「線」で繋げ、「面」とした日韓FTA(EPA)交渉を

金&張法律事務所
常任顧問 高杉暢也

第40回を迎える記念すべき日韓経済人会議が5月15,16日、千葉・舞浜で開催されました。全体会議第1セッションは「日韓の技術競争力強化と経済連携」、第2セッションは「日韓の均衡ある貿易拡大に向けて」というテーマ-で発表があり、質疑応答・討議が行われました。2日間の会議を通しての参加者の共通テーマは“何故、日韓FTA(EPA)は未だに締結されないのだろうか”ということにあったと思います。私はこの会議に2001年度から参加しているので今回が8回目となります。これまでの8回の会議の共同声明は判で押したように「日韓FTA(EPA)の早期締結」でした。しかし、未だに実現せず、なおかつ米韓FTAに先を越されてしまったのです。何故なのでしょう。“包括的FTAなのに日本の農水分野の開放率が低すぎる”というのが韓国側の主張です。“韓国側がテーブルにつかないから”というのが日本の主張です。言い換えれば、お互いが意地を張り合っていて、緊急性を感じていないのでしょう。しかし、本当にそうでしょうか。李明博大統領は4月19日の初の公式訪日で対日貿易赤字300億ドル解消を福田首相に相談しています。

対日貿易赤字300億ドルの中味は部品・素材です。韓国の国全体の貿易収支はバランスをしています。対欧米、対中は黒字ですが、対日は赤字でこの構造は数年来変っていません。これは韓国の産業構造からくるものです。モノづくりのできる国・韓国は家電製品、自動車、造船、半導体などの立派な完成品をつくり、輸出をすることで経済発展を遂げてきました。しかし、これら立派な完成品の中味、即ち、部品・素材はその多くが日本からの輸入に負っているのが現状です。韓国には部品・素材を手がける中小企業が育っていないことがこの原因です。対日貿易赤字300億ドル解消の鍵は「投資」、「部品・素材」、「中小企業」、この3つがキーワードだといえます。一方、日本でも部品・素材を手がける中小企業は後継者問題、技術の育成、移転問題などで頭を痛めています。

この「投資」、「部品・素材」、「中小企業」問題を解決するために、これまで産業資源部がジャパン・デスク(野村総研の支援を得て)をつくったり、KOTRAがJETROと協力して日本から中小企業ミッションを招聘したりして努力してきていますが残念ながら結果は思わしくありません。これまでそれぞれが努力はしているのですが全てが「点」で「線」として繋がっていないことに問題があったと思います。

今、日韓関係に新しい変化が起きています。これまでの革新大統領と異なり保守のCEO大統領が誕生し、ビジネスフレンドリーの環境が芽生え始めてきています。李明博大統領はビジネスラウンドテーブルで日本企業向けの工業団地の建設、土地代や税金の低減、労使文化の良好化を説明、日本企業の韓国への投資を訴えました。
一方、日韓経済人会議も“議論から実行へ”の変化が起きています。昨年11月に横浜で開催された新産業・貿易会議では日本側は「少子化と企業経営」というテーマで(1)女性の活用と(2)資格者の活用を提案しました。韓国側は「日韓企業間協力の強化」というテーマで「中小企業の共同開発基金創設」を提案しました。これらはすぐ実行にとりかかろうとするプロジェクトです。また、日韓産業技術協力財団はインターネット上、「日韓中小企業情報交流センター」を立ち上げました。

日韓経済人会議の席上で、私は日韓(韓日)経済協会がイニシィアティブをとって政府の予算で中小企業のための“駆け込み寺”、即ち、「ワン・ストップ サービスfor中小企業」の立ち上げを提案しました。インターネット上の「日韓中小企業情報交流センター」は一歩前進です。しかし、所詮、人間同士の交渉ごとですから“Face to Face”の交渉が必要です。両国の中小企業経営者がお互いの悩み、即ち、ニーズとニーズのすり合わせの場が必要なのです。この“駆け込み寺”にはアドバイザーや通訳が常駐していてワン・ストップでサービスを提供してくれる場なのです。

これら一つ一つは「点」です。「点」と「点」を繋げて「線」にして「線」を「面」にする必要があります。産業資源部のジャパン・デスクやKOTRA・JETRO協力の日本からの中小企業ミッション招聘が何故うまくいっていないのかをレビューし、李明博大統領の提案、新産業・貿易会議の提案、日韓経済人会議の討議事項、これら一つ一つの「点」を「線」で繋げ、「面」とし、正に総合力にして実行に移すことが何よりも必要です。実行する課程でいろいろな問題が顕在化してくるでしょう。さすれば、これらの問題を解決するために日韓FTA(EPA)の早期締結が必要であることが必然的に理解されてくるでしょう。

李明博大統領と福田首相が6月に開催することで合意した、日韓FTA(EPA)の実務者会談で、これまでの「点」を「線」で繋げ、「面」とした総合的な議論が行われ、ビジネスフレンドリーの環境が芽生え始めた今こそ、日韓FTA(EPA)締結が実現することを念じてやみません。

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