「品質国家-韓国」のイメージ作りを

分断後初の南北首脳会談実現、金大中大統領ノーべル賞受賞などと世界中を賑わす光の部分に感動し、反面、大宇自動車倒産、原油価格の上昇、政情不安や労組ストライキ瀕発などの複合危機に原因する忍び寄る経済不況の影の部分に危惧しながら新しい21世紀の最初の年を迎えた。

3年前の経済不況はタイバーツ通貨危機に端を発しているが、根本原因は“土地・労働・資本などの有形資産の時代であった30年前の経済構造、産業構造及び企業構造をもってして、知識・技術・情報などの無形資産の時代である21世紀のパラダイムに対応しようとしたところにある”と言われ、金大中大統領の“民主主義と市場経済”政策により経済・産業・企業の3つの側面から構造調整が行われ、いち早く経済回復を成し遂げIMF体制下の優等生と称された事は記憶に新しいところである。それなのに何故、また経済危機が忍び寄ってきたのだろうか。 マスコミや経済研究所などの分析によれば、98年以降の経済回復は世界経済好況に支えられた虚像であり、実質回復でない。原油価格の高騰のインパクトが大きい。大宇、現代などの財閥経営の構造改革が進んでいない。などがその原因としてあげられている。

私は約3年前の98年4月にコリアゼロックスを再建するために韓国に着任し、日本人経営者として1100人の韓国の社員と一緒に会社の再建に取り組み、整理解雇も、賃金カットもせずに1年で黒字化に成功した。その成功の鍵は「経営の透明性」と「労使の信頼関係の構築」にあると言って過言でない。この二つの関係は「鶏と卵の関係」にある。 昨今、労働組合活動が激化するのを見るにつけ企業の構造改革が進んでいない事に焦燥感を感じる。所有と経営の分離が進まない事が「経営の透明性」と「労使の信頼関係の構築」に繋がらないのではないかと危惧している。そしてこの事が再度、経済危機をもたらしている大きな要因であると思う。
一方、世界はグローバル化し、IT化しますますボーダレス化している。21世紀に入りこの傾向はますます加速化してくる。米国を軸としたNAFTA経済圏、欧州のEU経済圏、韓・日・中を軸にした北東アジア経済圏この3大経済圏を中心に世界は動いていく事は間違いない。 北東アジア経済圏において「高技術・高品質の日本」、「低コスト・巨大市場との中国」の間に挟まれて“韓国はまさに日本と中国というクルミを割る道具の中にいる”と多くの私の韓国の友人は言っている。韓国は今後どうすべきなのか?

浅学な私の答えは(1)日、中の産業構造とニーズに対応した、必要不可欠なニッチ産業で成長する。(2)知識と企業家精神で北東アジアのフィクサーの役割を果たす。(3)あらゆる分野で品質を高め“品質国家韓国”のイメージを作る。という3つに要約される。

特に3番目の品質を高め,“品質国家韓国”のイメージ作りが最も重要だと思う。即ち、企業人は品質経営、政治人は品質政治、公務員は品質行政を推進して“品質国家韓国”を建設しなくてはならない。韓国では今から約750年前、高麗高宗の時代に“八万大蔵経”を作った。これは1000名あまりの刻手が5200万字を81340経の経版に刻印した巨大な作品である。これは世界初といわれるグーテンベルグの印刷技術より早いものである。ところが最近これを電算化してみて,漢字の誤字も脱字も全くなかった事が明らかになった。この驚くべき品質は“一字参拝”(一文字を刻んでお辞儀を三回した)の精神から来ているという。この様に韓国の先祖は世界初の完全品質を成し遂げた実績を持っているのである。出来ない訳がない。 韓国で経営に携わる一人として多くの企業が一日も早く所有と経営を分離し、「経営の透明性」を図り「労使の信頼関係」を構築し、経営の品質を高め“品質国家韓国”のイメージを作ってもらいたいと願っている。


韓国富士ゼロックス株式会社
代表理事・会長 高杉暢也

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