韓国人の激情

黒田 勝弘(産経新聞ソウル支局長)

韓国の女性と結婚している日本の知人が体験的にいってくれた韓国女性観に「仲がいい時は天使、ケンカ すると阿修羅」というのがある。この知人は「阿修羅のように激しても仲直りした後の天使のような素晴らしさ 」があるため別れられないといっていたが、ぼくの知人には逆に「阿修羅に耐えられず別れた」のもいる。

一方、韓国男性と結婚したある日本女性から最近、別れるべきか別れざるべきか、身の上相談にあずかった。 聞くと、やはり夫の家族付き合いが大変ということだった。とくに夫の母親には無条件いいなり、というのが 耐えられないという。結局、別れるにいたったが、「自分の生活」を大事にする個人主義的な最近の日本女性 は、よほどの覚悟がないと韓国サイドの家族主義(とくに母親べったりの息子)にはついていけないだろう。

もちろん、夫婦の仲というのは同国人同士でも他人にはなかなかうかがい知れない微妙なものがあるわけだから、 周辺の数少ない「日韓結婚症例」をもって話を一般化してはいけないとは思っているが。

ところで先ごろグアムでの大韓航空機事故の時もすごかった。事故事態も悲惨だったが、それ以上に僕ら日本人 いや外国人には「韓国人の激情」が印象的だった。韓国内での事故現場などではしばしば目撃しているが、遺家族 たちの見せた「激情」ぶりに、捜索にあたっている米軍関係者たちも明らかに当惑していた。

たとえば遺家族たちは墜落現場を目の前に激しく慟哭し絶叫したのだが、その中で激情のあまり失神、卒倒が 複数例あり、米軍兵士に抱きかかえられ救急車に収容されるようすが目撃されている。いずれも女性だったが、 男性でも捜索班の制止を振り切って現場に駆け寄ろうとし、規制のロープをくぐり、崖からころげ落ちて 米軍兵士に「救助」される姿がテレビに映っていた。

これは明らかに激しい。身内はもちろん、他人が制止してもそれを聞かないというところが印象的だ。相手が 現場を取り仕切る米軍兵士であろうが誰だろうが、決して自らの感情を抑えようとはしないのだ。

先年、大韓航空機がサハリン上空で撃墜された時、韓国人の遺家族たちが慰霊のために北海道から船で現場 海上に出掛けたことがある。その時も同行した日本人記者たちは韓国人遺家族の激情に驚いた。知人の日本人 カメラマンは、感情表出に察して「他人」を意識し、できるだけ感情を抑えようとする日本人との違いに目を 見張る思いがしたという。

日韓関係をよく「近くて遠い関係」などというが、これはやはり実際にそうなのだ。言葉だって、地理的には 海峡ひとつはさんであんなに近いのに違いすぎるではないか。近いと言うことより、お互い近いのになぜ こんなに違うのかがやはりぼくの関心の原点である。

戻る