韓国しゃぶしゃぶの話

黒田 勝弘(産経新聞ソウル支局長)

韓国政府は最近、ハングルのローマ字表記を新たに統一すると発表した。その結果、金浦(キンポ)空港は「GINPO」に、釜山(プサン)駅は「BUSAN」になる。「キムチ」も英語では「GIMCHI」になるという。外国人には現行の「KIMCHI」の方が言語に近いと思うのだが、ハングル音の複雑さを正確に区別するとそうなるという。

たとええばハングルではKやGに相当する音は三種類あるし、FやBに相当する音も三種類あるのでそうするしかないとか。

金浦空港や釜山駅の英語表記はつい80年代初めに現行のようになり、われわれ外国人はホッと(?)したものだが、また元に戻るというわけだ。そのほか韓国の各地の地名の表記も変わるが、看板の書き換えや諸外国への通報など表記変更による費用と手間は相当なものだが、ひとごとながら気になる。

ただ人名や企業名など定着しているものは当面そのままという。金(キム)大統領は新表記だと「GIM(ギム)」大統領で、ゴルフの朴(パク)セリ選手は「BAK(バク)」選手になるが、今のままでいいという。このあたりが分かったようで分からない話だ。

ところで韓国人は周知のように「ツ」や「ザ」の音に弱い。したがってスポーツは「スポーチュ」になり、プラザ・ホテルは「プラジャ」になってしまう。その結果、日本語の「ヤクザ」が「ヤクジャ」や「ヤクシャ」になってしまい、役者は「役者」という別の日本語があるため、よく笑い話になる。

ある飲み屋でマダムが「昨日、うちのお店に日本の役者が来たわよ」というので、「何々、どんな役者だったの?」と身を乗り出したところ、俳優の役者ではなくヤクザのお兄ちゃんだったというわけだ。

以下は発音の話ではないが、日本発祥の料理に「しゃぶしゃぶ」があるが、これを韓国人によっては「シャブ」というのがいる。しかし「シャブ」では困る。日本では「シャブ」は覚醒剤(ヒロポン)を意味する隠語だからだ。「シャブをたべないか」といわれればギョッとするではないか。

で、「シャブ」を食べに行って韓国人に「しゃぶしゃぶ料理」の名前の由来を説明してやるのが楽しみだ。肉をつまんでナベの湯に浸し「しゃぶ、しゃぶ」と音を立てるように揺すりながら「だからシャブシャブなんだよ」というと、いつも感心してもらえる。

最近,実にうまい韓国風の「しゃぶしゃぶ屋」を見つけた。ソウル光化門の世宗文化会館裏、弁護士会館の裏にある「シャルル・しゃぶしゃぶ」(02-737-2711)で一人用の電熱器のナベを使い、スライスした肉の量もタップリだが、タレが絶品で、しかも野菜がいい。香り野菜など各所の緑色野菜がたくさん出るので、ビタミン欠乏恐怖症のぼくらソウルやもめにはうってつけだ。「韓国シャブ」もすてたものではない。

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