韓国・近ごろマツタケ考

黒田勝弘

 当地の最大の祭り日である「秋夕(中秋節)」のころは食料品の値段はいつも値上がりする。家庭内 需用もさることながら贈答用の需要が増えるからだ。

 今年の「秋夕」つまり旧暦八月十五日は九月十二日で、前後含め四連休となった。例年この時期には いくつかの付け届けがある。今年も大統領官邸からお茶が届いたり、知り合いからワインや蜂蜜などが 送られてきたが、毎年、楽しみにしているマツタケが今年はどこからも届かない。ちなみに「秋夕」直 前に百貨店の食料品売り場を偵察してみたところ、贈答品用の上物が一キロ六十万ウォンもしていた。 これでは届かないわけだ。

 と思っていたらその「秋夕」に、北から金正日将軍サマのマツタケが韓国政府に届けられ、ひとしき り話題となった。テレビで見た限りではすこぶる大型でかたちのいい超上物ばかりで、その量が何と三 トンという。

 将軍サマのツルの一声でも可能なお国柄だから、マツタケ三トンなどわけないとはいえ、驚くやらう らやましいやら。

 韓国マスコミによると北朝鮮産は値が落ちるからと、一キロ三十万ウォンで計算して総額は九億ウォ ン相当だと伝えていた。これであのころ日本市場に回るはずの北朝鮮産マツタケの出荷量が減ったので はないかと、余計な心配をしたりして。

 面白かったのは、将軍サマのマツタケを届けた朴在京・朝鮮人民軍大将が伝達式の際に、韓国側にマ ツタケの食べ方を講釈していたことだ。それによると塩水であらって焼くか、ゴマ油を薄くしいて炒め て食べるのがいちばんいいというのだ。

 はて、マツタケは本当は洗ってはいけないはずだし、油で炒めるのも香りの強いゴマ油などはまずい とおもうのだが。

 以前、韓国の最大産地である江原道襄襄を取材した折り、日本輸出でもうける前は、地元では刻んで メウンタン(唐辛子ナベ)にして食していたが、韓国(朝鮮)ではどうもマツタケの香りの生かし方が 分かっていない感じである。

 ぼくが近年、ある人から聞いてやっている食べ方は、マツタケを柄(軸)の先について泥だけを削り 落とし、水で洗わずほこりだけを払い、丸ごとあぶるように焼くというやつだ。焼くときにアルミホイ ルを使ってもいい。丸ごとというのがミソで、こうすると香りが逃げず、焼きたての熱いのをふうふう いいながら手で裂いて食べる。その際、少し塩をつければいい。これが最高である。

 ただ、「丸ごと」というのが日本ではねえ。産地の韓国で、キロ単位でもらったりしてこそ可能かも しれないが。

 幸いにも「秋夕」の後、収穫量が増えて値が下がったせいか、キロ単位で贈り物があった。早速いき つけの食堂や屋台にもっていって、技術指導(?)しながら大いにいただいた。マツタケは丸ごとに限 る。

 <筆者紹介>

 くろだ・かつひろ 1941年大阪生まれ。京都大学経済学部卒。共同通信外信部を経て、現在、産経新 聞ソウル支局長。

戻る