ノーベル平和賞の波紋

崔 碩義

 もうすぐ二十世紀は終わり、二十一世紀が始まります。でも、いつものように、陽は東から昇り、西 に沈むのに変わりはありません。

 最近のビッグニュースといえば、何といっても金大中大統領のノーベル平和賞受賞であるだろう。金 大中氏が長年、想像を絶する苦難を乗り越えて、この国の民主化と統一のために寄与してきた功績は何 人も否定できない。ノーベル平和賞も久方ぶりに素晴らしい人物に恵まれたものです。

 ところで、韓国でいち速く、この受賞をボロクソにケナス人物がいたのには恐れ入った。多分にそれ は政敵のやっかみから出たもので、すでに失笑の対象となりました。

 むしろ気になるのは、平壌が沈黙していることです。おそらく南北首脳会談の一方の主役である金正 日総書記が受賞できなかったという理由によるものでしょう。だが、形だけでも金大中大統領に祝意を 表するのがエチケットというものであり、そのニュースだけでも国民に知らせるべきなのに、これもし ないというのは、いささか大人げない。報道を意のままに遮断して、国民に一切知らさないという体質 は困ったものです。

 ただ、一部の人からダブル受賞の方がよかったのに、という意見もなくはなかった。だが、私はそう は思わない。軍事力優先を呼号し、独裁的に権力を行使しているだけでも、金正日総書記は失格です。 経済や食糧問題に失敗した責任者としての金正日総書記は最もノーベル平和賞に遠い距離にある人とい わねばならない。物事は常に正視する必要があると考える。最近、非転向長期囚が平壌に帰還して「金 正日首領を南北全体の大統領として奉ろう」と叫んだというが、あれは一体何だ。

 私が知らなかっただけで、世界一権威があるというノーベル賞をもらうためには、熾烈な運動を必要 とするらしい。聞くところによると韓国もそれを相当にやっていたといわれる。

 かって日本の佐藤栄作氏や、チベットのダライ・ラマがノーベル平和賞をもらった時には、失礼だが、 へぇーと思ったものだし、六年前にアラファトPLO議長とイスラエルの両首脳が同時に受賞したが、 こちらの方は肝心の中東紛争が、現在に至るも解決できないでいるのだから問題は深刻です。また、哲 学者のジャンポール・サルトルの如きはノーベル文学賞を蹴飛ばしている。ああ、勿体ない!

 韓国人はどうも世界一や東洋一になることを好む傾向があります。私は率直にいって視野の狭い愛国 主義、民族至上主義のたぐいを好みません。韓国人初のノーベル賞受賞だといって騒ぎ過ぎることもな いのです。

 そして、わが金大中氏を特別視して、例えば、憲法を改正し、大統領職を続投させるような動きがあ るとしたら賛成できません。

 <筆者紹介>

 チェ・ソギ フリーライター。慶尚南道出身。立命館大学文学部卒、朝鮮近代文学専攻。、産経新聞 ソウル支局長。

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