重症急性呼吸器症候群(SARS):
国立感染研究所感染症情報センター長による講演会


平成15年4月15日
在韓国大領事部

 4月11日、重症急性呼吸器症候群(SARS)に関し、日本国内で海外進出企業を対象として岡部国立感染研究所感染症情報センター長による講演会(参加者約200名)が実施されましたので、ご参考まで、講演内容等を以下のとおりお知らせします。
 なお、議事録の詳細については、後日外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp)に掲載される予定です。

1.全体概要

(1)冒頭、外務省三好領事治移住政策課長から、SARSの現状及び危険情報の発出や在留邦人支援等外務省がとった措置等について説明した後、岡部所長から、香港での発症例に基づいたSARSの臨床的特徴、病原、感染経路、予防策等について医学的観点から講演を行われた。

(2)参加者の殆どは香港、中国広東省を始めとするSARSが拡大している地域に進出している企業関係者であり、その多くからSARSに感染しているかどうか判明しない段階での自宅待機の妥当性及び予防方法等について質問があった他、現在発出されている危険情報の引き上げ、対象地域拡大(北京、上海等)の検討状況及び判断基準等について質問があった。

2.岡部所長による講演
(1)臨床的特徴(香港での発症例より)
  年齢層は25〜70歳までの健常人であり、15歳未満の小児の症例はごく少数である。潜伏期間は、一部10日以上見られるケースもあるが通常2〜7日間である。
症状としては、38度を越える高熱、悪寒、戦慄、頭痛、全身倦怠等のインフルエンザに類似した発疹や神経学的症状が見られ、消化器症状等は見られない。発症後3〜7日間で、乾性咳、呼吸困難、低酸素血症が見られるようになる。
   致死率は3〜4%前後(エボラ出血熱や天然痘は50〜70%、麻疹は0.1〜0.2%)で、患者の約90%は6〜7日目頃に回復することから、決して致死的な病気ではない。

(2)病原
人の鼻風邪や豚胃腸炎、ニワトリ胃腸炎、マウス肝炎等の原因となるコロナウィルス乃至その新種ではないかとの説が有力である。

(3)感染経路
当初、香港の病院関係者を中心に拡大したことから感染者の近くに密接した場合に感染すると考えられていたが、その後、アモイ・ガーデンの同階住居者間や飛行機内での感染例もあることから、必ずしも密接した場合でなくても感染するのではないかとも考えられる。

(4)予防策
感染経路が何であり、最低限気を付けることとして標準予防策をとる必要がある。つまり、血液、痰、便、尿、体液や咳は感染の可能性があるとの前提に、手洗い(接触感染予防に効果が高い)・うがい(喉の粘膜を滑らかにすることによって感染症の原因となる細菌・ウィルス等の微生物が付着しにくくなる)をすること。
また、100%予防効果があるわけではないが、マスクをすることによって粗い粒子(5micron以上)であれば防ぐことができる(ウィルス(nanometre級)そのものは防げない)。但し、今話題になっているN100やN95は医療関係者用であり、日常生活においては息苦しくて実践的でない。